第二十四条

早まりてキズにならぬ事は十に七、八は取り越してよし。先にする時は人を制する軍法の如し。又、断りとどける事、後日の為に言葉の釘指す事、是も大方早きを良しとす。受け取る金銭をかたくるしく言い出し、悪くとも十が十を乍(なが)ら早か良し。宿に在るよりも確かなり、などと言いて先に変の出来ることあり。併せて盗人用心の為、その座を過すことあり。又、徒然草に「しやせまし、せずやあらましと思うことはせざるが良し」とは家業の外の言葉にて、随分仕はめず、むざと歩かぬがよし。此の条は内はにすると一杯にする駆け引きなり。

第24条

失敗しても大きな傷にならないことであれば、十のうち七、八は先に手を打っておいてもよい。
先に行動することは、人を制する軍隊の戦法のようなものだ。
また、断りを伝えたり、後々のために言葉でしっかりと釘を刺すことも、基本的には早めがよい。
お金を受け取る際に細かく言い出すのも、多少悪く見えても、むしろ早い方が良い。
「宿に預けているよりも確かだ」などと言って先に変動が起きることもある。
また、盗難防止のために、その場所を早めに離れることもある。
さらに、『徒然草』にある「してしまおう、しないだろうと思うことは、しないほうがよい」という言葉は、家業以外のことであり、無理に仕組んだり、むやみに動き回らない方がよいという意味だ。
この条文は、内側で秘密裏に駆け引きをしながら、表向きは慎重に行動するべきだという教えである。

【語句解説】

  • 早まりてキズにならぬ事:急いでも失敗して大きな問題にならないこと。
  • 取り越してよし:先に行動して問題ない。
  • 人を制する軍法の如し:先手を打つことは戦略的に重要という意味。
  • 断りとどける事:予定変更や断りを早めに伝えること。
  • 言葉の釘指す事:約束事などをはっきりさせること。
  • 受け取る金銭をかたくるしく言い出し:お金のやり取りで細かく条件を言う。
  • 宿に在るよりも確かなり:手元で受け取るほうが安全だという意味。
  • 盗人用心の為、その座を過すことあり:盗難防止のために、居場所を変えることがある。
  • 徒然草の言葉:「しやせまし、せずやあらましと思うことはせざるが良し」=無理に物事を行うなという教え。
  • 仕はめず、むざと歩かぬがよし:無理に仕組んだり動き回らない方が良い。
  • 内はにすると一杯にする駆け引き:表向きは控えめだが、内側ではしっかり駆け引きすること。

【解説】

この教えは、「先手必勝」と「慎重な駆け引き」のバランスを説いています。

  • 家業や日常の運営において、失敗しても大事にならないことは積極的に先に動くべきとしています。
  • 特に断りや変更は早めに伝え、金銭のやり取りも細かく確認することがトラブル防止になる。
  • しかし、徒然草の教えにあるように、無理に物事を進めたり、あわてて行動し過ぎることは避けるべきとも言っています。
  • ここでは「表向きは控えめに振る舞いながら、内側でしっかりとした準備や駆け引きを行うこと」が重要だと示唆しています。

【要点】

急いでも大きな問題にならないことは、先手を打ってよい。
断りや変更は早めに伝え、金銭は細かく確認せよ。
しかし、無理に急ぐのは避け、表向きは控えめに、内側でしっかり駆け引きせよ。

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