第二十三条

神は清浄に敬い、仏は信心に念じて、多聞なる寄進にて家業に障る日を費やし、遠路の参詣、神代の巻にも仏経にもせねばならぬとの事なきよし。宗旨争いに人の腹を立て、芸能ゆえ上品の付合いし、旗参りに父母妻子を案じさせ、その身は風湿に当り或は目立つ寄進事をして四、五も経たぬに、不慮の物入りにあい、人に頼母子の大義をかけさなき迄も、問屋の払いをせぬもあるものなり。

第23条

神様は清らかに敬い、仏様は信心深く念じればよいものであって、たくさんの寄付をしたり、家業に差し障りが出るほどに日々を費やしたり、遠くまで参拝に行ったり、神代の巻物や仏教経典に忠実でなければならないということはない。
また、宗派の争いで人の腹を立てたり、芸能のために身分の高い人たちとの付き合いをしたり、旗参り(旗を掲げての参拝)で父母や妻子を心配させたり、自分は風邪や病気にかかっているのに目立つ寄付をしたりして、数年も経たないうちに急な出費に遭い、人に頼母子(頼み事)の大義を訴えなければならなくなることもある。そうした場合に、問屋の掛け払いをしない者もいるものである。

【語句解説】

  • 神は清浄に敬い:神様には清らかで丁寧な敬いを持つこと。
  • 仏は信心に念じて:仏には信心を込めて念じること。
  • 多聞なる寄進:たくさんの寄付や寄進。
  • 家業に障る日を費やし:商売や仕事に差し障るほど時間や労力を使うこと。
  • 神代の巻にも仏経にもせねばならぬとの事なきよし:神代記や仏教経典に厳密に従わなければならないということはない。
  • 宗旨争い:宗派や信仰の違いによる争い。
  • 芸能ゆえ上品の付合いし:芸事や趣味のために身分の高い人々と付き合うこと。
  • 旗参り:神社参拝で旗を掲げて参拝すること。
  • 風湿に当り:風邪や関節などの病気にかかること。
  • 寄進事をして:目立つ寄付行為をすること。
  • 頼母子の大義:頼み事をする大義名分。
  • 問屋の払い:商売上の掛け払い、代金の支払い。

【解説】

この文章は、宗教的な行為や社会的な付き合いに関する節度の重要さを説いています。

  • 神仏への敬いは、形式や多くの寄進に頼るよりも、心の清らかさや信心が大切だと説いています。
  • また、宗派の違いによる争いで感情的になったり、芸事のために身分の高い人々との無理な付き合いをすること、または目立つ寄付のために無理をして身体を壊したり、急な出費に困ってしまうことを戒めています。
  • さらに、そうした無理が原因で商売の支払いが滞る(問屋の払いをしない)こともあるとして、過度な見栄や無理な付き合いは家業にも自分自身にも害になると警告しています。

【要点】

神仏への敬いは形式よりも心が大切。
宗派争いや見栄のための無理な付き合いは控えよ。
無理な寄付や出費で家業を損なうな。
それが原因で商売の支払いまで滞らせてはならない。

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