第二十一条

書物の上での事、その外万の利巧人に向いて、理屈めき説き聞かするは身苦し。且又、家業の上の事、或は人のとりなし、人に意見する、是など充分素直なること乍(なが)らそれだに余りくどからぬ様に先き人の気持ちになれ合いて言いたし。

この一節は、非常に含蓄のある教訓です。以下に現代語訳と詳しい解説を示します。

【現代語訳】

書物で得た知識やその他あらゆる物事について、利口ぶって人に理屈っぽく説き聞かせるのは、自分にとっても苦しいことだ。
また、家業に関することや、誰かの仲裁、あるいは他人に意見をするような場面では、たとえ自分の考えが真っ直ぐで正しかったとしても、くどくならないように注意し、相手の立場や気持ちになって、調和を保ちながら話すようにすべきだ。

【語句解説】

  • 書物の上での事:書物から得た知識・学問的なこと。
  • 万の利巧(よろずのりこう):あらゆる賢いこと、利口と思われる知恵。
  • 理屈めき:理屈っぽく、理論立てて(しかし往々にして押し付けがましい)。
  • 説き聞かする:説明して納得させようとする。
  • 身苦し:自分自身が気まずい・窮屈になる。自他ともに不快というニュアンス。
  • とりなし:仲裁・仲介。
  • 素直なること乍ら:意見が正直で道理にかなっていたとしても。
  • それだに:それですら。
  • 余りくどからぬ様に:あまりくどくならないように。
  • 先き人の気持ちになれ合いて:相手の気持ちになって、うまく調和を保って。

【解説】

この教えでは、大きく2つの姿勢を戒めています:

❶ 知識を振りかざすことへの戒め

  • 書物で学んだ知識や「利口そうな話」を人に説き聞かせることは、本人も聞き手も不快になる。
  • いかにも学んだ風な理屈を並べ立てるのは、謙虚さを欠き、相手との関係を損ねかねない。
  • 知識は人に示すものではなく、自分の行動に生かすものという姿勢が大切。

❷ 他人に意見・助言するときの慎み

  • 家業について指導する場合や、仲裁・意見を述べる場面でも、たとえ内容が正しかったとしても、
    • くどくならないように
    • 相手の気持ちを思いやりながら
    • 穏やかに調和を持って伝える
  • つまり、「正しさ」より「伝え方」や「人との和」を重視するべきという考えです。

【要点】

知識を鼻にかけて理屈っぽく語るな。
たとえ正しい意見であっても、押しつけず、相手の気持ちに立って、柔らかく言え。

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