第十九条

諸芸は人に知られぬを良しとす。若(も)しその道の友達、組合のいらぬ 事一通りさっと覚えたるもよけれ。家業に少しも障(さわ)らば無用なり。

第19条

芸事は、他人に知られないくらいがちょうどよい。
もし、その道の仲間や団体に属さずに、一通りさらっと身につけるくらいなら、それでもよい。
しかし、家業(本業)に少しでも支障をきたすようなら、やる意味はない。

【語句解説】

  • 諸芸:諸々の芸事。音楽・舞踊・書道・茶道など、趣味的な技能全般。
  • 知られぬを良しとす:あまり人に知られない、目立たないほうがよい。
  • その道の友達、組合:芸事の専門的な仲間や流派、団体。
  • いらぬ事:加入せずともという意味で、「組織に属さないこと」。
  • さっと覚えたるもよけれ:さっと一通り覚えるくらいならよい。
  • 家業に少しも障らば:本業に少しでも支障があれば。
  • 無用なり:やる必要がない。意味がない。

【解説】

この教えは、芸事を嗜むことの分をわきまえる重要性を説いています。

  • 芸事は趣味やたしなみとして楽しむにはよいが、それをひけらかしたり、のめり込んで本業(家業)を疎かにしてしまっては本末転倒だという考えです。
  • 特に、芸事の世界の組合(流派など)に深入りすると、時間やお金を取られることもあり、本業に差し障る恐れがあります。
  • したがって、「さっと」「一通り」覚える程度ならよく、それも他人に知られないくらい控えめが美徳とされます。

【要点】

芸事はほどほどに。人に見せびらかす必要はなく、本業に支障をきたすならばやめるべき。

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