第十八条

総じて賀例などとて何を整えねばならぬということなかるべし。世間にはづれぬ様にその中にも随分さらりとすべし。殊に正月暮との事、品少なきを良しとす。手前先祖より燈明を神棚へ捧げすえ、下に一所に燃し来たり候へ。その他茶の焙じ立て、火打箱、こたつ用心専一なり。

この条文(一八)は、年中行事(特に正月や節目の儀礼)における節度と実用性、そして先祖や神仏への敬意を保ちながらも、無駄なく簡素に暮らす心構えを説いています。

第18条
お祝いのしきたり(賀例)だからといって、あれこれ整えなければならないということはない。世間から浮かない程度にしつつも、できる限り簡素に済ませるのがよい。
とりわけ正月や暮れのことは、品物の数が少ないことをよしとする。
自分の家では、先祖代々の習わしにより、燈明(ともしび)を神棚に供え、下でも同じように火を灯して続けてきたので、それを守るがよい。
そのほか、茶の焙じたて、火打箱、こたつなど、実際の火の用心には十分に気をつけること。

解説

この条文の主なポイントは以下の通りです。

① 形式や見栄ではなく、節度と実用性を重視せよ

  • 「賀例」=祝儀や年中行事(正月、節句、暮れの支度など)を指します。
  • 世間体だけを気にして形だけを整えるのではなく、「さらりと」=簡素・自然体に行うことが望ましいとしています。
  • 「世間にはづれぬ様に」=他人から浮かない程度には整えつつ、無駄に贅沢をしないことが大切。

② 「品少なきを良しとす」

  • 特に正月や年末年始の飾り・贈り物などは、たくさんそろえるより、質素であるほうがよいという価値観。
  • これは、虚飾や浪費を戒め、家庭を守るための教訓でもあります。

③ 信仰心・家風の継承

  • 「手前先祖より燈明を神棚へ捧げすえ」=先祖からのしきたりで、神棚に灯明を供える習慣は大切に。
  • 「下に一所に燃し来たり候へ」=神棚だけでなく、その下(居間など)でも火を灯してきた慣習を続けよ。
  • これは、神仏への敬意・先祖のしきたりを大切に守る心の重要性を説いています。

④ 暮らしに必要な備えと火の用心

  • 「茶の焙じ立て」=正月の客用にもなるが、香ばしさや温かみを感じる実用的な用意。
  • 「火打箱」=火を起こすための道具。昔は火の元の管理に必須。
  • 「こたつ」=寒さをしのぐための道具。ここでも**火の用心を最も大事にせよ(専一なり)**と強調されています。

現代的な応用

  • 年末年始に必要以上に飾り立てたり高価なものを整えたりすることに意味はなく、簡素で心のこもった支度こそ価値がある。
  • 家のしきたりや信仰的な慣習を大切に受け継ぐことは、形より心を重視する文化の表れ。
  • 防災・防火など生活上の注意を最優先にせよという非常に実践的な教え。

総評

この条文は、家庭の平穏と品格を守るための年中行事の心得を説いたものであり、日本的美徳と生活哲学が詰まった実用的かつ道徳的な指針です。

  • 浪費せず
  • 見栄を張らず
  • 心を込めて簡素に整え

安全第一を忘れない

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