第九条

費え物入りは、三年、五年に大物入り一度、一年に二、三度も覚悟の他の費えはありて、思いの外成る儲けは少なし。その療法は簡略なり。又、早朝に百目、弐百目損しても、日中に壱分、弐分の簡略に気をくばるが誠の簡略なり。

この文は、生活における出費の現実と、真の倹約(簡略)とは何かを教えてくれる、非常に実践的な教訓です。出費というものは避けられず、想定外のことがよく起きる。だからこそ、日常の細かな倹約が真の節約である、と説いています。

第9条

生活していれば、三年や五年に一度は大きな出費があるものだし、一年のうちにも、二度や三度は思いがけない出費があるものだ。
それに比べて、思いがけず儲けが舞い込むことは、実に少ない。

では、その対策(療法)はどうするか?
それは「簡略(=節約)」を実行することに尽きる。たとえば、朝のうちに百目や二百目(※かなりの金額)損をしてしまったとしても、その日のうちに、一分や二分(※小銭)を節約しようと心がける。
このような日々の細かい節約にこそ、本当の節約の意味があるのだ。

解説ポイント

  • 「三年、五年に大物入り一度」
     → 家の修繕、冠婚葬祭、災難など、大きな出費は周期的に避けられない。
  • 「一年に二、三度も覚悟の他の費えありて」
     → 予期せぬ出費(医療費、急な来客、破損など)は年に数回ある。
  • 「思いの外成る儲けは少なし」
     → 予想外の収入はめったにない。だからこそ、出費をどう抑えるかが重要。
  • 「簡略なり」
     → 「倹約」「質素」「無駄を省く」と同義。
  • 「早朝に百目、弐百目損しても…」
     → 朝に大きな損失があっても、その日の中でできるだけ小さな無駄を抑える努力を怠らないことが重要。
  • 「壱分、弐分の簡略に気をくばるが誠の簡略なり」
     → 真の倹約とは、小さな節約を積み重ねる姿勢にある。大きなことではなく日々の心がけ。

要点まとめ:

  • 思いがけない出費は頻繁に起こるが、思いがけない儲けはほとんどない。
  • 出費に対する唯一の確実な療法は「簡略(倹約)」である。
  • 小さな節約を積み重ねる姿勢こそ、真の節約・簡略。
  • 大きな損があったとしても、日中の細かな節約を疎かにしてはならない。

この教えは、現代の「無駄遣いを減らしたい」「家計を見直したい」と考える人々にも、そのまま応用できる実践的な知恵です。
特に、「大きな損をした日こそ、小さな出費に気をつけよ」という姿勢は、心を立て直すうえでも貴重なアドバイスですね。

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