第七条
郷に入りては郷に従い、又、時代時代の風俗に習うこと、此の二つは即ち天道なり。天は陰陽を媒体にして、盛衰を外にす。人の忠孝正直五行が万年も変らぬ如く、時の風俗と所の習いは南北と夏との替るが如し。
この文は、「変化する世の中や場所に柔軟に順応することの大切さ」と「変わらぬ道徳との違い」について説いた教えです。以下に、現代語訳と解説を示します。
第7条
「郷に入っては郷に従え」と言うように、その土地に入ったなら、その土地の習慣に従い、また、その時々の時代の風俗(世の中の習わしや常識)に従うこと——この二つは、すなわち“天の道”である。
天(自然の理)は、陰と陽の働きを通じて、盛んなものと衰えるものを外に現す。
人間の「忠・孝・正直」や「五常(仁・義・礼・智・信)」といった道徳は、万年たっても変わることはないが、
その一方で、時代の風俗や土地の慣習は、南と北が違い、また夏と冬が入れ替わるように、変わり続けるものである。
解説ポイント
- 「郷に入りては郷に従い」
→ よその土地へ行ったら、その地の風習や文化に従うのが礼儀という、よく知られたことわざ。 - 「時代時代の風俗に習う」
→ 時代によって常識や流行、価値観は変わる。それに適応することも大事。 - 「此の二つは即ち天道なり」
→ このように、場所や時代の変化に従うことは、自然の道理=天の理(天道)にかなっている。 - 「天は陰陽を媒体にして…」
→ 自然界は陰と陽のバランスによって変化・盛衰を見せる、という東洋思想(陰陽五行説)を踏まえた一文。 - 「忠孝正直五行」
→ これは「五常」(仁・義・礼・智・信)と同様に、変わらぬ人の徳目であり、時代が変わっても守るべきもの。 - 「南北と夏との替るが如し」
→ 南と北の違い、夏と冬の交代のように、風俗・習慣は当然変わるもので、それを拒むのは自然に逆らうこと。
要点まとめ
- 道徳(忠・孝・正直など)は普遍で変わらない。
- しかし、風俗(世間の慣習・常識)は時代や地域によって常に変化する。
- 変化に柔軟に従うことは、自然の摂理=天道にかなっている。
- 頑固に古い慣習にとらわれるより、時と場をわきまえて適応することが賢明。
この教えは、「節を曲げぬこと」と「融通無碍であること」のバランスを教えるものです。
現代にも通じる、**「変わらぬ信念」と「変えるべき柔軟性」**の両立の大切さを、端的かつ見事に言い表しています。
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