第四条

一生腹は立てずに済むものなり。腹立たしき真似はたまに要るものなり。百度腹を立て、後刻よくよく思案すれば九十五、六度は立てずに済むことなり。後の四、五度も立てずに済ませれば済むものなり。腹立てぬ人となれば、とて家内の人にも他の人にも馬鹿にされることはなきものなり。腹を立て、何かの障りになる事は十度に六、七度あるものなり。

第4条

一生、怒らずに過ごすことはできるものだ。
ただし、たまには腹を立てたふりを見せることも必要な場面はある。
百回腹を立てたとしても、あとでよく考えてみれば、そのうちの九十五、六回は、怒らなくても済んだことである。
残りの四、五回も、本気で怒らなくても、穏やかに済ませることはできるはずだ。

怒らない人になったからといって、家族や他人に軽んじられたり、馬鹿にされたりすることはない。
むしろ、怒って何かを言ったりした結果、後で問題になることは、十回中六、七回もあるものだ。

解説ポイント

  • 「腹を立てずに済むものなり」
     → 怒りは抑えようと思えば抑えられる、という冷静な視点です。
  • 「腹立たしき真似はたまに要るものなり」
     → 全く怒らないと、かえって舐められることもあるので、「怒ったふり」を見せる程度は時に必要。
  • 「百度腹を立て、…」
     → 怒りのほとんどは後で考えれば無用なものだという自己反省を促す言葉。
  • 「腹立てぬ人となれば…馬鹿にされることはなきものなり」
     → 怒らない人は、かえって尊敬されることもあるという教えです。
  • 「十度に六、七度あるものなり」
     → 怒りによって生じるトラブルの確率は高く、それを考えると、怒らないことのほうが得だという冷静な分析。

要点まとめ

  • 怒りは、ほとんどの場合不要である。
  • 必要以上に怒らないことが、円満な人間関係をつくる。
  • たまに怒るふりをするくらいが丁度よい。
  • 怒ることは、かえって自分に不利になることが多い。

このように、「怒りを制することは、身を守り、徳を高める道である」と諭している文です。非常に実用的な人生訓ですね。

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