第十条

返礼事、茶礼、仕着せなどのようなることは余り簡略にはせぬものなり。万によき程のものというは一生知れぬものなれば人に相談のなる事は聞き合わせて但しくはなし。

第10条

お返しの品(返礼)や、お茶のお礼(茶礼)、仕着せ(祝いなどの贈り物として贈る衣服)などの類のことは、あまりに質素に(=簡略に)しすぎてはならないものである。

どんなことでも、「ちょうどよい加減(ほどよさ)」というものは、人間が一生かけても見極めることは難しい。
だから、このような礼儀に関することで相談が必要になった場合は、人とよく意見を擦り合わせて、慎重に対応すべきである。

解説

  • 「返礼事・茶礼・仕着せ」
     → いずれも、人間関係・社交上の礼儀に関わる行為で、形式や心配りが問われる場面です。
     ここでの「簡略にせぬ」は、「節約を重ねすぎると礼を欠くことになる」という意味です。
  • 「余り簡略にはせぬものなり」
     → 倹約を美徳とするこの文書の流れの中であえて、「礼の場では過度な節約はよくない」と一線を引いているのが重要です。
  • 「万によき程のものというは一生知れぬものなれば」
     → 物事の「ちょうどよさ」(=やりすぎず、足りなさすぎず)は、一生かけても正解がわからないほど難しい。
  • 「聞き合わせて但しくはなし」
     → 「相談になるようなことは、他人とよく相談し、擦り合わせて、誤りのないようにするのがよい」という意味。
     独断ではなく、複数の意見を参考にする姿勢が大切。

要点まとめ

  • 礼儀に関わる贈り物や儀式では、過度な倹約はかえって無礼になる。
  • 「ちょうどよい」加減を見極めるのは非常に難しく、自分一人で判断すべきでない。
  • 人付き合いに関する判断は、経験者や周囲と相談し、誤りのないよう慎重に行うこと。

この教えは、節約と礼節のバランスについて重要な示唆を与えています。
普段の生活では倹約に努めつつも、「人の気持ちが関わる場面」では、節約よりも心遣いを優先せよという配慮に満ちた教訓です。

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